AHAインストラクターになるには
AHAインストラクターになるための要件は、AHA ECC Training Program の運営マニュアルである Program Administration Manual ならびに、各インストラクターマニュアルに規定されています。
それによると、トレーニングセンターがインストラクター候補生を選定するにあたって、AHAが掲げる理想像は下記の通りです。
・教えることに意欲的であること
・受講生の学習を促進させることに意欲的であること
・コース完了に向けて必要な技能を修得を保障できること
・受講生からの評価を受け入れ、自身の知識と技術の研鑽に努めること
JSISH-ITCは、アメリカ心臓協会の意思を日本国内で体現していくことを活動ポリシーとしています。そのため、JSISH-ITCと提携するAHAインストラクターには、AHA ECCトレーニングプログラム運営マニュアルである Program Administration Manual(PAM)の内容に精通し、その精神をもって行動することを求めます。また、インストラクターとしてAHA-ECCコースを普及するだけでなく、AHAが指針として打ち立てている教授システム学(インストラクショナル・デザイン/成人学習理論)をもとに、自分自身を向上したいという熱意があることを要件とします。
PAMに記されたAHAインストラクターとしての責務をいくつか列挙します。
- 禁煙
- トレーニングセンターと提携し、2年間に4回以上のインストラクター活動を行なうこと
- 提携トレーニングセンターでの活動に限らず、積極的に地域の救命率向上に貢献すること
- 人道的配慮・著作権等、AHAインストラクターとしての高い倫理観を持つこと
- AHAインストラクターとしてのステイタスを他の営利活動に利用しないこと
プロフェッショナルな集団として
-インストラクターに求められる資質-
AHAのミッションを共有して、ゴール達成に協働する人たちはすべて「同僚」(colleague)です。「同僚」は以下の点で「お友達」、「知り合い」、「顔見知り」とは異なります。
「同僚」の要件
- 救命医療・救命処置・応急処置を施行(あるいは普及)するプロフェッショナルとしてしての自覚があること
- 成人としてのマナーを身に付け、良好なコミュニケーションに基づくいい人間関係を構築できること
- ルールに則ったディスカッションを通して、よりよい問題解決を図れること
- AHAのメンバーとして倫理的に適切な言動が取れること
- 上記の要件を満たしていることについて他の同僚が同意できること
JSISH-ITCを運営し、コースを提供する私たちには、コース外であってもいつも「同僚」として適切に行動することが期待されます。
そして組織として、またインストラクターとして高いレベルを維持するために、同僚は同僚の合意によってコンセンサスベースで選ばれることがあります。
AHAインストラクター資格の種類
アメリカ心臓協会のECCトレーニング・プログラムには、指導員資格として下記のインストラクター・ステイタスが存在します。
- ハートセイバー・インストラクター Heartsaver Instructor(市民向け講習全般)
- BLSインストラクター BLS Instructor(一次救命処置全般)
- ACLSインストラクター ACLS Instructor(成人の二次救命処置)
- ACLS EPインストラクター ACLS EP Instructor(ACLS EPコース指導)
- PEARSインストラクター PEARS Instrucutor(小児急変アセスメントと安定化)
- PALSインストラクター PALS Instructor(小児二次救命処置全般)
これらのインストラクター資格のうち、JSISH-ITCでは、ハートセイバーインストラクター(HS-I)、BLSインストラクター(BLS-I)、ACLSインストラクター(ACLS-I)、ACLS-EPインストラクター(EP-I)、PALSインストラクター(PALS-I)、PEARSインストラクター(PEARS-I)の育成を行なっています。
HS-CPR AED | ||||||
HS-FA | ||||||
HS-PFA | ||||||
BLS | ||||||
ACLS | ||||||
ACLS-EP | ||||||
PEARS | ||||||
PALS |
HS-CPR AED:ハートセイバーCPR AED、HS-FA:ハートセイバー・ファーストエイド
HS-PFA:ハートセイバー小児ファーストエイド
BLS:BLSプロバイダー、ACLS:ACLSプロバイダー
インストラクター資格取得までの流れ
AHAインストラクターになることを希望している人は、まずはトレーニングセンターにコンタクトを取り、提携に関する承認を受ける必要があります。
日本医療教授システム学会AHA国際トレーニングセンター(JSISH-ITC)との提携を希望する場合は、最寄りのJSISH-ITC活動拠点へコンタクトを取り、オリエンテーションを受けて下さい。
AHAインストラクターになるには、教えたい分野(HS/BLS/ACLS/ACLS-EP/PALS/PEARS)の有効期限内のプロバイダー資格を持っていることが条件です。
その上で、原則としてて、次の3つのステップが必要です。
- Instructor Essentials(クラスルーム・パート)修了
- 教育実習+指導モニター評価に合格すること
※日本独自のローカライズとして、2018年10月現在、BLS、HS、ACLSに関しては不要となりました。
ガイドライン2015の改定から、旧来のインストラクターコースは、インストラクター・エッセンシャルコース Instructor Essentils Course と呼び名が変わりました。
インストラクター・エッセンシャルコース
オンラインパート ※必須ではありません
ハートセイバー/BLS/ACLS/PALS/PEARSのインストラクター資格ごとに設けられたインストラクター基礎を学ぶe-Lerningコースです。インターネット上で履修するオンラインコースで、www.onlineaha.orgより、登録を行います。単元毎に$30をクレジットカード決済し、履修するとパソコンのプリンタから修了証が印刷できます。次段階のクラスルームスタイルのインストラクター・エッセンシャルコースに進むために、この修了証が必須となります。2017年7月現在、日本語には対応しておらず、英語版のみとなります。
クラスルーム・パート
1日コースで、各コース開催に必要な資器材の使用・メンテナンス方法、指導の実際、試験の実施方法、などをロールプレイ・トレーニングを交えて学びます。25問の筆記試験が課されています。
BLSインストラクター(BLS-I)はHSインストラクター(HS-I)の上位資格ですので、BLS-Iを取得された方はHS-Iを取得せずとも、すべてのハートセイバーコースを教えられます。またPALSインストラクターもPEARSプロバイダーコースを指導できます。
教育実習+指導モニター評価
実際の受講生を前にして行われる実地トレーニングおよびその評価です。インストラクターとなるための実地試験とも言えます。トレーニングセンター・ファカルティ監督の下、実際の指導にあたり、インストラクターとして最低限の能力があることを確認させていただきます。
モニターは一回で完了する場合もあれば、何度かの教育実習が必要になることもあります。モニターが完了すると、正式なAHAインストラクターとして認定され、アメリカ心臓協会 日本医療教授システム学会トレーニングセンター(AHA JSISH-ITC)より2年間有効のAHA公式HS/BLS/ACLS/ACLS-EP/PALS/PEARSインストラクターカードが発行されます。
なお、インストラクターコース修了から6ヶ月以内にモニターを完了することが求められています。そのため、インストラクターコース受講前にコース運営アシスタント/ボランティアスタッフとしてプロバイダーコースに参加し、講習コース内容に十分慣れ親しんでおくことをおすすめします。
JSISH-ITCのインストラクター階層と権限
教育実習とモニターを終えた時点では、インストラクターとしての入口に立ったに過ぎません。その後すくなくとも4回は、訓練期間と位置づけます。5回目以降のインストラクションから一人前のインストラクターと見なし、instruction feeを受け取ることが可能となります。(instruction fee は各コース主催者の裁量で決められます。個別にご確認ください)
なお、JSISH-ITCの運営指針として、なるべく早期にモニターを終了し、インストラクターの名の下、指導訓練を積むこととしています。そのためモニターを終えた時点でのインストラクターには、単独でコース開催を行なう権限は認めていません。TCファカルティ、コースディレクター等の上級インストラクターが企画したコースの中で、スタッフの一人としてインストラクションに参加できます。
コースディレクター
責任者として主体的にコースを開催するためには、JSISH-ITC規則としてコースディレクターの認定が必要です。
コースディレクターは、TCファカルティが認定を行い、ステアリング・コミテッティ(JSISH-ITCの最高意志決定機関)への公示をもって決定されます。
コースディレクターは、十分な知識とインストラクション能力、コース管理能力があり、独立して講習開催する立場としてTCファカルティが認定をします。その目安として、8回以上のインストラクション経験が目安となりますが、経験回数をもって自動的にディレクター認定が行われるものではありません。
JSISH-ITCインストラクターは、所属病院施設などで、個人としてコース企画・運営することを認めています。特にBLSコースは個々のインストラクターのバッググラウンドを通して普及することが効果的と考えていますので、熱意のある方へのコースディレクター認定を積極的に行なっていきます。
AHAの規則上、コースディレクター制度はACLS/PALSインストラクターにしか存在しません。しかしJSISH-ITCではコースの質管理上の必要から、ハートセイバー/BLS/PEARSインストラクターについても、JSISH-ITC内規としてコースディレクター制度を導入しています。BLS、HS、PEARSコースディレクターは、AHA公式ステイタスとしては「インストラクター」であり、インストラクター候補生をモニターする権限は認められません。